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【イベントレポート】慶應スタートアップインキュベーションプログラム(KSIP)ピッチ&支援者交流会を開催
慶應義塾大学イノベーション推進本部スタートアップ部門(以下SU部門)は2023年10月から、慶應義塾大学の研究成果のスタートアップへの技術移転を通じた社会実装を目指すグループを対象とした、全学レベルのインキュベーションプログラム「慶應スタートアップインキュベーションプログラム/Keio Startup Incubation Program」(以下、KSIP)を提供しています。
このプログラムは、研究者・起業家に対して個別にカスタマイズした伴走支援や、研究者・起業家が繋がることのできるコミュニティの提供を特徴としており、採択チームによる外部資金獲得(LINK1, LINK2)や資金調達(LINK)などの実績も既にあがっています。
上記プログラムをより充実させるため、KSIP参加チームの皆様と、外部支援者の方々との交流イベントを2024年9月11日にCRIK信濃町で開催しました。
今回はそのときの模様をお伝えします。
◆第1部 KSIP参加5チームによるピッチ◆
■Opening Session
まず冒頭に、イノベーション推進本部 本部長 兼 スタートアップ部門長 新堂より、ご挨拶を行いました。
スタートアップ部門 特任講師の鎌形より、イノベーション推進本部スタートアップ部門と活動のご紹介を行いました。
またCRIK信濃町のインキュベーションマネジャー アシスタントを務める生田より、CRIK信濃町の施設概要のご紹介を行いました。
■Pitch Session
KSIP参加5チームより事業内容を紹介いただきました。
(1)宮本 佳明 環境情報学部 准教授/BlueWX株式会社 代表取締
「航空機に影響を与える乱気流の予測モデル」
乱気流を精度高く予測するサービスを提供し、あらかじめ乱気流を避けた航空機の飛行を実現し、安全性/経済性の課題を解決します。
(2)堀込 俊郎 医学部 特任講師
「自由な会話音声で認知症を早期発見 世界一の高齢先進国で健康寿命の延伸に臨む」
65歳以上の6人に1人が認知症になるものの、未だ治療法も予防法も確立できていない現状に対し、手軽・素早い・安い・繰り返しチェック可能な診断サービスを提供します。
(3)勝俣 良紀 医学部 専任講師
「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の呼気診断システムの開発と実装」
NASHとは、肝臓に脂肪が蓄積し炎症を起こしている状態を指し、発がんリスクが高く診断が難しい課題に対し、息を吐くだけで診断が可能になるサービスを提供します。
(4)早野 元詞 医学部 特任講師
「Regulation of FAPs through Rho-GTPs and Wnt/β-catenine for Sarcopenia induced by GLP-1 agonist」
日常生活に支障が出るほど急激に筋肉が減少してしまう状態である「サルコペニア」に対し、治療薬の開発を目指しております。
(5)牧 英之 理工学部 教授
「チップ上グラフェンの集積光デバイスと赤外分析センシング技術の事業化」
2010年ノーベル賞を受賞した新材料「グラフェン」を用いたデバイス開発や赤外分析、センシング、情報通信等へのデバイス応用を事業化していきます。
◆第2部 KSIP参加5チームの皆様+モデレーターによるパネルトーク◆
KSIPのみならず、外部のプログラムや補助金等を活用し、各チームは事業化に向けて活動を推進しています。「事業活動の中で、どんな課題があるのか?」について、支援者が集っている場だからこそ、研究者/起業家のリアルな現状をお話いただきました。
Q.外部から支援が欲しい機能や業務はありますか?
- ビジネスの専門家を探すのは難しい。事業を推進していくうえで、交渉も多いので、「信頼」が大事。
- そもそも「どんな支援が必要か」という所から支援して欲しい。
- バックオフィスや技術系エンジニアなど「人をどう集めるか?」は重要な課題。
- 三田会など慶應独自のネットワークを活用できたら良い。
Q.現在または今後発生が予想される課題はありますか?
- 人の出入りがあると、業務量のコントロールが難しくなる。
- 株の分配は交渉がハードになりがちなので、初期の資本政策・意思決定権者を明確にしてチームづくりは大事。
- 海外展開を見据えて、最初から海外のVCを入れるか?も検討が大事。
Q.研究と事業の両立について、難しいポイントはありますか?
- 「エフォートをどう棲み分けるか?」を自分の中で整理することが大事
- 仕事すればするほど成果は上がるため、「家庭」とどうバランスを取るかが大事。
- 本来は会社でやるべきことを、大学の研究室としてのリソースを使ってしまうなど、COI(利益相反)については間違いが無いように慎重に進めている。
- 知財の観点から、研究成果の発表を控えるケースがある。
Q.国プロや助成金で難しいと感じるポイントは?
- 短納期である程度の量の提出書類をが求められるのは毎回大変だと思う。
Q.ディープテックの領域に知見が薄いビジネス人材はバリューを出せるのか?
- 研究開発以外の全てだと思う。事業計画を立てて、営業に行くなど、やっていただきたい領域は多岐にわたる。
Q.研究サイドと事業サイドの考えが対立するケースはあったのか?
- 基本的にスタートアップはビジネスをやる主体なので、ビジネス/研究を天秤にかけるとしたら、ビジネスが大事だという考えを持っている。
◆第3部 支援者の皆様とのカジュアルネットワーキング◆
カジュアルネットワーキングでは、「この研究シーズが気になるから、ぜひ繋げて欲しい」といったお声をいただき、様々な支援マッチングがこれから生まれてくるきっかけになりました。
今後もCRIK信濃町ではさまざまなイベントを開催していきます。
一般の方も参加いただけるイベントはCRIK信濃町のPeatixグループで掲載予定です。ぜひPeatixをフォローしてお待ちください。